2.CRAZY DAYS CRAZY FEELING
天狗の夢を見た。物陰に隠れていると程なく見つかり、食い付きそうな鼻先より逃げおおせず、あまりの恐ろしさに背に飛び乗りて世界、色を帯びる。
時計の夢を見た。二つの時計が並んでコチコチいう。いったい一つを選べと。一つというそもそもをどう捉えたものか考えあぐねていると、自ら時計が落ちて、あちらが私を選んだ。
壁の夢を見た。壁は自らが壁になったことを嘆いていた。私のせいではないと。全てあなたのせいなのですとつぶれた卵に話しかける。卵は答えた。それが夢の始まりです。
卵の夢を見た。卵は自ら卵であることに満足していることを嘆いていた。あなたが夢など始めるから、卵は壁とついになってしまったではないかと。答えて壁は言った。それは夢です。
壁と卵の夢を見た。壁は卵に、卵は壁に寄り添って舟を漕ぐ。いつか壁に新たな意味が生まれることを夢見て一つオールを漕ぎ、二つ、いつか卵に新たな意味が生まれることを夢見て。
死す神の夢を見た。私はこの度あちらへ行こうと思うと死す神は言う。あちらとはどちらかと問えば、こちらだと笑うので、死す神に死生観を問うたところ、どちらかしかないのなら選ばぬと答えた。
生す神の夢を見た。私はこの度あちらへ行こうと思うと生す神は言う。あちらとはどちらかと問えば、そちらだと笑うので、生す神に死生観を問うたところ、創造と答えた。
天狗の夢を見た。物陰に隠れていると程なく見つかり、食い付きそうな鼻先より逃げおおせず、あまりの恐ろしさに背に飛び乗りて世界を成す。
蝶の夢を見た。蝶がひらひら飛ぶので、おまえは蝶かと聞くと否、夢と答える。心得て夢かと尋ねると否、蝶と答える。どちらか決めねばならぬかと蝶尋ね、閉口す。
夢の蝶を見た。ひらひら夢の蝶が飛ぶので、おまえは夢の蝶かと聞くと、私は夢の蝶ですと答えた。心得て、ここは夢の世界かと聞くと否、現と答える。なれば現の蝶ではないかと言うと、ひどく怒った蝶が鱗粉を撒いた。
手のひらを夢見た。右の手は右の、左の手は左の、果たして手を合わせれば、中ほどの地図開きて風そよぐ。身委ねれば道険しからずや。夢か現か蝶舞い降りて眼を覚ませし夢の蝶の蝶の夢。
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