7.熱愛発覚中 1 / 2



 指先をはじくと二つの輪が重なり、一つの輪を示すとまたすれ違い、三つ目の輪が動き出して砂が落ちた。すると、砂の音が響いて影が浮かんだ。どのような砂も瓏々とした影を呼び寄せるが、この砂は格別。いつかはぐれてしまった影がゆらゆらと、私の元にやって来る。

 私の影はあるとき方々へ散った。散った後にはどこかで落ち合っていたかもしれないが、私から散ったときには無数の影として分散していった。影をなくしてからの私は、どこへ行くにも身軽といったふうで、陽の光を浴び、連なるもののない足先ではじけ飛び、喜び勇んで前進した。が、時間とは度し難い影のようなもので、その経過とともにいつしか、私は失った影を捜して歩くようになった。そしてやっとの思いで私は手にしたのだった。影を連れ戻す装置を。

 影を捜すべく長く日を費やして、または手繰り寄せるように、何事か聞きつけては方々に参じていたある日、立ち寄ったオークション会場で土地の一画と巡り会った。土地は広く、少々のいわく付きであった。どのようなことかと申せば、まず、土地などという希少珍品が出回るというのにはいわくがあるということだ。それについては出品概要に明記されていて、叡智の介在が記してあり、それはこんなことだった。あるコンテンツが叡智判定により閉鎖するに至り、その研究備品と資料が閉鎖するコンテンツの預かりどころとなった。土地はその研究資料であり、コンテンツに吸収され閉鎖される予定であったのだが、直前で叡智が判定を翻した。よくある話だ。判定が翻ったとしても、研究そのものはすでにないのだからオークションにと、そのような流れだ。

 土地はホログラムでの出品で、落札希望者に見学が許されていた。そうして私は土地の一画を訪れた。その土地はドームに密閉され、機密処理にスロープが刻まれていた。私はスロープの頂上に赴き、その土地を見渡したのだった。土地は直径が一キロと記されていたが、それがどれくらいの数か把握できずに、ただ広大と見下ろした。黄色い土地であった。まあるくくり抜くように感じられたのは、その周りに木々が生えていたからであろう。

 顔を近づけたところで、あちらは広大な土地の一画、はい左様ですかと隅々まで知らせるものではなかったが、よくよく見ると、それなりにうかがい知ることはできた。何をと言われても困る。ただ感触をと、そのようなことだった。買いましょうと言うものが、私ともう一人いた。品が大きい落札とあって、機密処理であるにもかかわらず、ドームへの侵入が許された。どうぞ、品定めをということなのだが、それにはもう一つ理由があって、この、土地の一画を落札したとしても、落札と同時に惑星になるということだった。それならば、オークションに出品されたことにも合点がゆく。惑星を排出するにはオーナーが必要と、落札者を待ち受けていたというわけだ。落札に際し、惑星の命名権と、土地のほんの一部を所有することができる。説明を受けると、もう一人の希望者は辞退して、小さな窓口より、私は一人土地の一画へと踏み込んだ。


eggtreeplanet

いつかの私が探したときには見つけることができなかった桜の木。しかし今の私は至極簡単にその木にたどり着くだろう。 ゆ「繋がれた部屋」より

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